大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(ラ)293号 決定 1975年3月10日

抗告人 日本交通株式会社

右代表者代表取締役 川鍋秋蔵

右代理人弁護士 高橋壽一

相手方 塚田ヨツ

主文

原決定を取消す。

抗告費用は相手方の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙「即時抗告の申立書」記載のとおりである。

二  当裁判所の判断は次のとおりである。

(一)  本件記録によれば、原告塚田ヨツ(相手方)、被告日本交通株式会社(抗告人)間の東京地方裁判所昭和四七年(ワ)第四四七〇号損害賠償請求事件につき昭和四九年五月一六日言渡された仮執行宣言付判決に基づき、相手方は同年同月二三日東京地方裁判所に対し同庁同年(ル)第一六二三号、同年(ヲ)第四五八〇号債権差押転付命令の申立をなし、同日同裁判所はその旨の債権差押及び転付命令を発し、右債権差押及び転付命令正本は同年同月二五日第三債務者である株式会社富士銀行(虎ノ門支店)に、同年同月二七日債務者である抗告人にそれぞれ送達されたこと、他方、抗告人は前記仮執行宣言付判決に対し控訴を提起するとともに民事訴訟法第五一二条の規定に基づき東京高等裁判所に対し強制執行停止決定の申立をし、同裁判所は同年同月二四日、右仮執行宣言付判決に基づく強制執行は申立人(抗告人)において保証として金一五〇万円もしくはこれに相当する有価証券を供託したときは本案控訴事件の判決のあるまでこれを停止する旨の強制執行停止決定をなし、抗告人は同年同月二七日東京法務局に右保証金を供託するとともに、同年同月二九日前記債権差押及び転付命令に対し東京高等裁判所に即時抗告を申立て、同時に右強制執行停止決定正本を提出したことが認められる。

(二)  よって按ずるに、債権差押及び転付命令は即時抗告に服し、即時抗告期間中および右抗告申立後抗告裁判所における裁判があるまでは右債権差押及び転付命令はいまだ確定しないと解すべきであり、したがってその限りにおいて強制執行はなお終了しないものというべきであるから、たとえ右命令が債務者及び第三債務者に送達された後でも、右命令に対する即時抗告申立期間内に即時抗告の申立がなされ、抗告裁判所に強制執行停止決定正本が提出されたときは、あたかも執行裁判所において債権差押及び転付命令を発する手続中に同正本の提出を受けたにもかかわらずこれを看過して右命令を発した場合と結局同様であると考えられるから、抗告裁判所としては、いまだ確定していない右命令を違法として取消すべきである。

(三)  そうであるとすれば、本件において、前記債権差押及び転付命令が債務者(抗告人)および第三債務者に送達された後ではあるが右命令がいまだ確定していない間に、抗告裁判所に前記強制執行停止決定正本が提出されたことは前記認定のとおりであるから、右債権差押及び転付命令はいずれも取消を免れないものというべきである。

三  とすれば、本件抗告は理由があるから、原決定(前記債権差押及び転付命令)を取消すべきものとし、抗告費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条に則り主文のとおり決定する。

(裁判長判事 古山宏 判事 青山達 小谷卓男)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例